局所性多汗症

はい、承知いたしました。局所性多汗症について、さらに詳しく解説します。

1. 局所性多汗症の種類と症状の詳細

  • 手のひら(手掌多汗症):

    • 症状: 手のひらが常に湿っている、水滴がつく、ひどい場合は滴り落ちる。紙や書類が濡れて扱いにくい、ペンが滑る、ドアノブや手すりなどを触るのがためらわれる、握手が困難、スマホやパソコンの操作に支障が出る、金属アレルギーが悪化しやすい。

    • 心理的影響: 人との接触を避けるようになる、自信喪失、社会不安。

  • 足の裏(足底多汗症):

    • 症状: 靴下がすぐに湿る、靴の中で足が滑る、水虫になりやすい、匂いが気になる、サンダルやミュールが履けない、靴が傷みやすい。

    • 心理的影響: 靴を脱ぐ場面を避ける、足の臭いを気にする、人前で足を出すのが恥ずかしい。

  • 顔面・頭部多汗症:

    • 症状: 顔や頭から汗が滴り落ちる、化粧崩れがひどい、髪型が崩れる、常にタオルやハンカチが必要。

    • 心理的影響: 人目が気になる、外出をためらう、対人関係に影響が出る。

  • 腋窩(わきの下)多汗症:

    • 症状: 服に汗染みがつく、洋服の素材によっては臭いが気になる、何度も着替える必要がある。

    • 心理的影響: 服の色や素材を選んでしまう、汗染みが目立たないように姿勢を気にする、デオドラント剤が手放せない。

  • その他: 額、鼻、背中、鼠径部など、特定の部位に多量の汗をかく場合もあります。

2. 局所性多汗症の原因

  • 原因不明(原発性局所性多汗症): 最も多いタイプで、明確な原因は特定されていません。神経の過剰な活動が関与していると考えられています。遺伝的要因も示唆されています。

  • 他の病気や状態が原因(続発性局所性多汗症):

    • 内分泌疾患: 甲状腺機能亢進症、糖尿病、褐色細胞腫など。

    • 神経疾患: パーキンソン病、脳卒中後など。

    • 感染症: 結核、ブルセラ症など。

    • 腫瘍: ホジキンリンパ腫など。

    • 薬剤: 一部の抗うつ薬、降圧薬など。

    • 肥満: 体重増加による体温上昇。

    • 更年期障害: ホルモンバランスの変化。

    • 精神的な原因: ストレス、不安、緊張など。

  • 生活習慣:

    • 食生活: 香辛料の多い食事、カフェインの過剰摂取、アルコールの多飲。

    • 運動不足: 発汗機能の低下。

    • 睡眠不足: 自律神経の乱れ。

3. 診断方法

  • 問診: 症状、発汗部位、発汗の程度、家族歴、既往歴、服用薬などを詳しく聞き取ります。

  • 視診: 発汗部位の状態、皮膚の状態などを観察します。

  • 発汗誘発試験: ヨード紙や発汗試験紙を用いて、発汗部位や程度を客観的に評価します。

  • 血液検査: 甲状腺機能、血糖値、感染症の有無などを調べます(続発性多汗症が疑われる場合)。

  • 画像検査: 胸部X線、CT、MRIなど(続発性多汗症が疑われる場合)。

4. 治療法

  • 薬物療法(外用薬):

    • 塩化アルミニウム: 発汗を抑制する効果があります。濃度や基剤が異なる製剤があり、医師の指示に従って使用します。刺激感やかぶれを生じることがあります。

  • 薬物療法(内服薬):

    • 抗コリン薬: アセチルコリンという神経伝達物質の働きを抑え、発汗を抑制します。口渇、便秘、排尿困難などの副作用が出やすいです。

    • 精神安定剤: 不安や緊張が原因の場合に、精神的な安定を図ります。

  • イオントフォレーシス:

    • 水道水に手足を浸し、微弱な電流を流すことで発汗を抑制します。自宅でも可能な機種があります。

  • ボトックス注射:

    • ボツリヌス菌毒素を注射し、発汗を促す神経の働きをブロックします。効果は数ヶ月持続します。

  • 神経ブロック:

    • 交感神経を遮断する薬を注射し、発汗を抑制します。

  • 手術:

    • 胸腔鏡下交感神経遮断術(ETS): 胸腔鏡を用いて、発汗に関わる交感神経を切断またはクリップで遮断します。手のひら多汗症に有効ですが、代償性発汗(他の部位からの発汗が増える)という副作用が起こることがあります。

    • 皮下組織削除法: 腋窩多汗症に対して、汗腺を含む皮下組織を切除します。

5. 生活習慣の改善

  • 食生活: 香辛料やカフェイン、アルコールの摂取を控える。バランスの取れた食事を心がける。

  • スキンケア: 清潔を保ち、通気性の良い素材の服を着る。制汗剤やデオドラント剤を適切に使用する。

  • ストレス対策: 十分な睡眠、適度な運動、リラックスできる時間を作る。

  • その他: 体重管理、禁煙。

6. 精神的なケア

  • カウンセリング: 症状による悩みや不安を相談し、心理的な負担を軽減します。

  • 認知行動療法: 多汗症に対する考え方や行動パターンを変えることで、症状を改善します。

  • 家族や友人への相談: 理解とサポートを得ることで、精神的な安定につながります。

7. 医師への相談

  • 自己判断せずに、まずは皮膚科を受診しましょう。

  • 症状、経過、生活への影響などを詳しく伝えましょう。

  • 治療法について、メリット・デメリットをよく理解しましょう。

  • セカンドオピニオンも検討しましょう。

局所性多汗症は、適切な診断と治療によって症状を改善し、QOL(生活の質)を向上させることが可能です。

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