世界遺産・宮島のもみじ谷に佇む「みやじまの宿 岩惣」。この記事では、創業170年の老舗旅館の中でも最も格式高い離れ「洗心亭」での宿泊体験を詳しくレポートします。伝統的な数寄屋造りの美しさ、心のこもったおもてなし、瀬戸内の旬を活かした懐石料理など、シニア層の方にこそおすすめしたい上質な滞在の魅力をお伝えします。
みやじまの宿 岩惣に宿泊した理由と第一印象
今回、宮島への旅行を計画するにあたり、岩惣を選んだ最大の理由は「伝統的な日本旅館で本物の和の美を体験したい」という思いでした。安政元年創業という歴史、夏目漱石や昭和天皇も宿泊された格式、そして厳島神社まで徒歩3分という立地の良さが決め手となりました。
宮島桟橋に到着すると、岩惣の送迎車が待っていてくださいました。宮島口から船でわずか10分、桟橋から車で約7分でもみじ谷公園の入り口に建つ旅館に到着します。フェリーを降りてすぐ送迎していただけるので、重い荷物を持って歩く心配がないのは大変ありがたかったです。
明治25年建築の玄関棟を目にした瞬間、その堂々とした佇まいに圧倒されました。木造建築ならではの温かみと、長い歳月が刻んだ風格が見事に調和しています。玄関に足を踏み入れると、お香の香りがふわりと漂い、心がすっと落ち着く感覚がありました。
ロビーでのチェックイン時、スタッフの方々の物腰の柔らかさと丁寧な説明に、「ここは本当に特別な場所なのだ」と実感しました。老舗旅館ならではの品格あるおもてなしが、到着したその瞬間から始まっていたのです。
みやじまの宿 岩惣の客室レビュー|離れ「洗心亭」の魅力
部屋に入った瞬間の感動ポイント
岩惣には本館、新館、そして離れという3つのタイプの客室がありますが、私たちが宿泊したのは**離れの中でも最も歴史のある「洗心亭」**です。本館から離れまでは、もみじ谷の風情ある小道を5分ほど歩きます。他の離れを眺めながら最も奥まで進むと、清らかな佇まいの洗心亭が姿を現します。
「洗心亭」の名は、表千家の即中斎宗匠が命名されたもの。昭和25年に建てられたこの離れは、文豪・吉川英治が『新・平家物語』を執筆した由緒ある部屋としても知られています。
引き戸を開けた瞬間、8畳一間のシンプルながら完璧に整えられた空間に、思わず息をのみました。数寄屋造りの技術が惜しみなく注がれた意匠の美しさ、障子から差し込む柔らかな光、畳の香りと木の温もり。全てが調和して、ただそこに座っているだけで背筋が自然と伸びるような清々しさを感じました。
窓からの景色と客室の設備
部屋を囲む広縁からは、もみじ谷の自然を間近に感じることができます。小川のせせらぎが常に耳に心地よく響き、野生の鹿が庭先に姿を見せることもあるそうです。四季折々の表情を見せる庭園美は、まさに日本の原風景そのもの。
設備面では、現代的な快適さと伝統建築の美しさの両立に感心しました。エアコンやコンセント、換気扇といった生活に必要な設備は全て目立たない場所に配置され、数寄屋造りの美観を損なわない工夫が随所に施されています。木枠の硝子戸は隙間が多く、冬は寒さを感じるかもしれませんが、それもまた歴史ある建物ならではの味わいだと感じました。
洗心亭には内風呂も付いています。ただし、温泉ではなく真鍮製の蛇口から出る普通のお湯です。仲居さんから「お湯の温度は60℃に設定してください」と案内があり、最初は驚きましたが、岩の浴槽が非常に冷たいため、高めの温度設定がちょうど良い湯加減になります。このような細やかな配慮とアドバイスも、長年培われたおもてなしの一つなのでしょう。
アメニティの充実度とこだわり
基本的なアメニティは一通り揃っています。浴衣、タオル、バスタオル、歯ブラシ、ドライヤーなど、必要なものは全て用意されていました。特に印象的だったのは、ウェルカムスイーツとして出されたもみじ饅頭です。
実は、もみじ饅頭は岩惣が発祥の地。明治39年頃、当時の女将が高津堂に制作を依頼して誕生した「岩惣でしか味わえないお茶菓子」が、今では広島を代表する銘菓となったのです。その歴史を知りながら味わうもみじ饅頭は、格別の美味しさでした。
また、岩惣のラゲージタグがもみじ饅頭の形をしているという遊び心も素敵でした。こうした小さな工夫が、滞在全体に温かみを添えてくれます。
みやじまの宿 岩惣の温泉・大浴場を徹底レポート
泉質と温泉の効能
岩惣には、宮島では珍しい天然温泉「若宮温泉」があります。この温泉の発見には興味深い逸話があります。明治18年に掘った井戸水を使っていた際、先々代女将が「ここの水は肌がツヤツヤするのよ」と話していたことから調査したところ、地下わずか5メートルからラドンを含む良質な温泉が見つかったのです。
泉質は中性低張性冷鉱泉で、ラドンを含む特別な温泉です。効能としては、筋肉痛、冷え性、慢性消化器病、神経痛、疲労回復など幅広い効果が期待できます。肌触りが柔らかく、湯上がり後の肌のしっとり感が印象的でした。
大浴場の雰囲気と混雑状況
大浴場は本館の地階にあり、離れからは5分ほど歩きます。内湯と露天風呂があり、どちらも若宮温泉を使用しています。露天風呂からは、もみじ谷の渓谷美を眺めながら入浴できるのが最大の魅力です。
夜には原始林がライトアップされ、幻想的な雰囲気の中で温泉に浸かることができます。小川のせせらぎを聞きながらの入浴は、日常の喧騒を忘れさせてくれる至福のひとときでした。運が良ければ、野生の鹿が露天風呂の近くを散歩する姿を見ることもあるそうです。
私たちが訪れたのは平日だったこともあり、大浴場は混雑しておらず、ゆったりと温泉を楽しむことができました。朝の散歩の後に入る温泉も格別で、もみじ谷の清々しい空気と温泉の組み合わせは、心身ともにリフレッシュできる最高の体験でした。
ただし、大浴場にタオルの備え付けはなく、部屋から持参する必要がありますので、ご注意ください。これは岩惣のクラスの旅館としては珍しいかもしれませんが、環境への配慮という観点もあるのかもしれません。
みやじまの宿 岩惣の食事|夕食・朝食のクオリティ
夕食のハイライトと味の感想
岩惣の料理は、ミシュラン一つ星を獲得し、G7サミットのワーキングディナー会場にも選ばれたという実力派です。京懐石で長年腕を磨いた料理長が、瀬戸内の海の幸と広島の山の幸を駆使して創り上げる懐石料理は、まさに「五感で堪能する芸術作品」でした。
離れに宿泊の場合、夕食は部屋食が基本です。プライベートな空間で、静かにゆったりと食事を楽しめるのは、シニア層にとって大きな魅力だと感じました。
印象的だったのは、旬の食材へのこだわりです。広島名物の牡蠣や穴子はもちろん、その日に獲れた新鮮な魚介類が美しく盛り付けられ、一品一品に板長の真心が込められていることが伝わってきます。味付けは繊細で上品、素材本来の味を最大限に引き出す調理法に感動しました。
量も適切で、最後まで美味しくいただける絶妙なボリューム感です。「あー満腹」という心地よい満足感とともに食事を終えることができました。ご飯のおかわりができればさらに嬉しかったという声もあるかもしれませんが、これだけ質の高い料理をいただけることに心から感謝の気持ちが湧きました。
朝食の内容とおすすめポイント
朝食は食事処でいただきます。手づくりの和食が並ぶ朝食膳は、優しい味わいで朝の身体にすっと染み込んでいくようでした。
以前はハーフブッフェ形式だったそうですが、現在は感染症対策の一環として和膳のみの提供となり、その代わりに内容が充実しています。焼き魚、だし巻き卵、豆腐、香の物など、どれも丁寧に調理されており、朝から豊かな気持ちになれる食事でした。
特に印象的だったのは、白いご飯の美味しさです。もみじ谷の清らかな水で炊かれたご飯は、それだけで何杯でもいけそうなほどでした。
食事会場の雰囲気とサービス
部屋食での夕食は、担当の仲居さんがタイミングを見計らって一品ずつ運んでくださいます。料理の説明も丁寧で、広島の食材や調理法についても詳しく教えていただけました。食事のペースに合わせた気遣いが素晴らしく、急かされることも待たされることもない、心地よい時間の流れでした。
朝食会場の食事処も、落ち着いた雰囲気で他の宿泊客との適度な距離が保たれており、静かに朝食を楽しむことができました。スタッフの方々の接客は一貫して丁寧で温かく、「また来たい」と心から思わせる対応でした。
みやじまの宿 岩惣のその他施設・サービス
岩惣には、喫茶室「楓泉」や売店があり、宿泊中の寛ぎの時間を過ごせます。売店では、もみじ饅頭をはじめとした広島の特産品を購入できるので、お土産選びにも便利です。
特に印象に残ったのは、送迎サービスのきめ細やかさです。宮島桟橋への送迎はもちろん、チェックアウト後も荷物を預かり、観光中に桟橋まで届けてくださるサービスがあります。これにより、身軽に宮島観光を楽しむことができました。
チェックアウト後、厳島神社の満潮時の美しい姿をゆっくりと拝観し、そのまま桟橋で荷物を受け取って帰路につくことができたのは、本当にありがたかったです。このような細やかな心配りが、岩惣の長年のおもてなしの真髄なのだと感じました。
また、館内は階段が多いため、足腰に不安のある方は事前にスタッフに相談することをおすすめします。ただし、新館は車椅子でもアプローチできるバリアフリー対応となっているそうです。
みやじまの宿 岩惣の宿泊レビュー総評|こんな人におすすめ
今回の岩惣での滞在は、期待をはるかに上回る素晴らしい体験でした。170年の歴史が培った格式とおもてなし、数寄屋造りの美しい建築、四季を感じられる自然環境、そして心のこもった料理とサービス。全てが調和して、非日常の極上時間を提供してくれました。
総合的な満足度とコストパフォーマンス
離れの洗心亭は決して安価ではありません。しかし、この価格に見合うだけの価値が確実にあると断言できます。歴史的価値のある建築に宿泊できる体験、ミシュラン星付きの料理、宮島という世界遺産の地での極上の滞在。これらを総合すると、むしろコストパフォーマンスは高いと感じました。
特におすすめしたい人
まず、シニア層のご夫婦には最適です。静かで落ち着いた環境で、ゆったりと過ごしたい方にぴったりです。部屋食で気兼ねなく食事ができ、送迎サービスも充実しているので安心です。
次に、日本の伝統文化を愛する方にも強くおすすめします。本物の数寄屋造り建築に触れ、格式ある日本旅館の真髄を体験したい方には、これ以上ない選択肢です。
また、記念日や特別な日の旅行の舞台としても理想的です。結婚記念日や還暦祝いなど、人生の節目を祝う場として、岩惣の格式と雰囲気は完璧です。
そして、宮島観光を満喫したい方にも最適な立地です。厳島神社まで徒歩3分という好立地は、宮島散策の拠点として理想的です。
再訪したいかどうかの率直な意見
「また宮島に行くことがあれば、必ず岩惣に泊まろう」。これが私たちの率直な感想です。季節を変えて訪れれば、もみじ谷の表情も変わり、また違った魅力を発見できるでしょう。春の新緑、秋の紅葉、冬の静寂、そして夏の涼やかさ。四季それぞれの岩惣を体験してみたいという思いが、今から募っています。
歴史ある建物ですので、階段が多く、現代的な便利さを求める方には向かないかもしれません。しかし、本物の日本旅館の風情と格式を求める方には、岩惣は間違いなく最高の選択肢の一つです。
まとめ
みやじまの宿 岩惣の離れ「洗心亭」での滞在は、日本の伝統美とおもてなしの心を五感で体験できる、まさに極上の時間でした。170年の歴史が紡いできた格式と、進化し続けるサービスの融合は、シニア層をはじめとする質を重視する旅行者に強くおすすめしたい宿です。
宮島観光と合わせて、世界遺産の地で特別な滞在をお考えの方は、ぜひ岩惣での宿泊を検討してみてください。きっと忘れられない思い出になるはずです。
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